協議離婚は、夫婦間の任意の話合いにより双方が離婚に合意する方法です。
夫婦が話合う時間を持ち、お互いに自分の意見だけを主張せずに譲歩することができれば、この方法で離婚することができそうです。
しかし、それは簡単なことではありません。配偶者が話合う姿勢を見せてくれない、話合いがまとまらない、または配偶者が行方不明などの場合は、協議離婚は難しくなります。
90%以上が協議離婚
厚生労働省の「平成16年人口動態統計上巻」によると、平成15年に離婚した件数は283,854件で、うち協議離婚が90.7%、調停離婚が8.4%、審判離婚が0%、判決による離婚が0.9%です。
「離婚=弁護士、裁判所」というイメージがあるかもしれませんが、実際は離婚したほとんどのケースが協議離婚によるものです。
協議離婚の離婚原因
「夫と性格が合わない」「姑とそりが合わない」という理由でも、夫婦が離婚することに同意をすれば、離婚届を提出して協議離婚が成立します。
つまり、夫婦が離婚に同意をすれば、離婚原因(離婚理由)は何でもよいことになります。
しかしながら、裁判所で離婚を争うときは、民法770条で決められた離婚理由に該当していなければならないので、協議離婚のように「離婚理由は何でもよい」という訳にはいきません。
協議離婚の良い点・悪い点
(良い点)
- 費用がかからない(弁護士を依頼する、離婚公正証書を作る場合は別途費用)
- 夫婦間の合意がであれば、比較的短期間で離婚の成立が可能
- 離婚手続きが簡単(離婚届に署名・押印して役所に提出)
(悪い点)
- 十分な話し合いがされないうちに、離婚を成立させてしまうことがある
- 離婚後の生活のことを考えずに離婚してしまい、後悔する人も少なくない
離婚には合意しているが、慰謝料などが決まらない場合
離婚することの夫婦間の合意、離婚後の子の親権者を父母のどちらにするのか、離婚後の新しい本籍地などが決まっていれば、離婚届を作成することはでき、離婚届は役所で受理されます。
一方で、離婚に関するその他の条件、例えば、慰謝料、財産分与、養育費のことは離婚届にに記載する必要はありません。
したがって、まずは協議離婚を成立させた後で、慰謝料や財産分与などについては、離婚後に引き続きの話し合いをしたり調停で決めることもできます。
しかし、先に離婚が成立してしまうと、その開放感から話し合いを放棄されてしまう可能性もあります(特に元夫から)。
協議離婚手続きの流れ
協議離婚をするときは、できれば、慰謝料・財産分与・養育費については、離婚届を提出する前に話合って決めておきましょう。
つまり、次の流れで協議離婚手続きを行なうことをお薦めします。
離婚すること、そして慰謝料、財産分与、親権、養育費などについて
- 夫婦間で十分に話し合いを行なう
- 「離婚協議書」または「離婚公正証書」の作成
- 離婚届の提出(=協議離婚の成立)
~離婚届に関するトラブル~勝手に離婚届を出されそう
例えば、夫が勝手に離婚届を提出する心配があるときは、夫婦の本籍地の役所に「離婚届の不受理申出」を出しておきます。
これにより、離婚届が受理されるのを止めることができます。
離婚の話合いが整った後で、「不受理申出の取下げ」をすれば、離婚届は受理されます。
離婚届に署名押印したあと気が変わった
協議離婚の成立時期は、離婚届に署名・押印したときではなく、役所に離婚届を提出して受理されたときです。
また、離婚が有効に成立するためには、離婚届を役所に提出した時点で夫婦双方に”離婚をする意思”と”離婚届を提出する意思”がなければなりません。
では、「やっぱり離婚はしたくない!」とに伝えたにもかかわらず、夫が離婚届を提出してしまったときは離婚は成立しないのでしょうか?
一度役所に離婚届が受理されてしまうと離婚したという事実が戸籍に記載されますから、簡単にそれを取り消すことはできません。
離婚届が役所に受理されてしまった場合には、家庭裁判所に「離婚無効の調停」をおこして離婚が無効であることを争うことになります。
協議離婚の内容によっては、行政書士が関わることが可能です。
話合いの進め方、離婚協議書や公正証書についてなどご相談ください。